藝大入試論考 建築科

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【最速】影問題の解法

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ハイ、ということでね、今からH29空間構成の問1(影の求形)を5分で解いていきたいと思いま〜〜すwww

(問題はこちら。ネタバレなので解いたことある人だけ見てね)

 

まずは空間把握が大前提。パースをつけずに2〜3方向から立体を落書き。

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堅実に、接地してるとこから考えていこうかね。

コツ1. 鉛直な棒はそのまま倒す

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藝大はド親切にも、過去3回の影問題いずれも入射角を45°に設定してくれてる。この場合、任意の点はその真下から高さと同じだけ行ったとこに落ちる。棒が倒れるイメージ。

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例えばこの棒を倒して…

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こう。

究極、全ての基準点の高さに関してこれをやってけば終わりなんだけど、それだとまだ20分ぐらいかかっちゃうし、ミスも怖い。ということで、さらに工夫していこう。

コツ2. 水平な面はそのまま移す

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高さの同じ点どうしは同じだけ行って落ちるので、位置関係は変わらない。つまり地面と水平な面はそのままの形で地面に落ちる。これは入射角関係なく。

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これを踏まえると、水平な面は、そのうちの一点の移動先がわかればそれを基準に機械的に描ける。棒5本分ぐらい省略したことになった。

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で、立体と対応した辺を影にも全部補って、囲まれた部分が立体の影だね。あ、接地面は"地面に投影される影"とは捉えないことにするよ。

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四面体の接点の求め方はお好きに。縦の正三角形の斜辺が空間上で一直線に繋がってるのに気づくとかっこいいね。もちろん地面からの棒倒しでもOKよ。

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辺を繋いで四面体も完成。

コツ3. "点"で考える

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初めからそういう語り方だったと思うけど、立体ってのは点の集合だから、立体の一点に対応して影の一点があるわけ。立体は接してる(点がある)のに影は離れてるなんてことはありえない。計算だけでやるとミスってそういうことが起こったりする。気づけるように。

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球は長軸が伸びた楕円になるってのはまあイメージしてもらうとして、それらの影は空間と対応した接点を持つ。この問題で四面体と球が45°のラインで謎の接し方をしているのは、影が重ならないようにという配慮だね。察せるように。

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ハイ、そんなこんなで瞬殺。5分は既知だからだけど、コツがわかっていれば初見でも10分ぐらいで終わるはず?

形態はダサいけど、問題としては基本が詰まった美しいH29本試でした。

 

 

空間構成の本試では過去H25・H27・H29と隔年で全く同じ形式の三面図×影問題が出ている。ジンクスを守れば来年(H31)もそうなるのだが、いい加減この形式も腐らせるべきである。影問題なんて作業だからつまらない、それを一般認識にすべく、この記事を書いた。

現状、三面図は関門となるレベルのものではないが、影問題は合格者の中でも完答が少数派なレベル(求積まで含めるとH29は1人、H25に至っては0人と言われている)で、"正解しただけで受かる"とか"見切りをつけて絵に移るスキル"とか、果ては"H25は数lllを使わないと解けない出題ミス"なんて言説がまかり通っている。そんなはずがない。入射角が特別角(45°,30°,60°)である限り、点の移動先を定める作業(そしてその位置関係から面積を求める作業)は初等幾何に終始する。みんな義務教育受けたか?

とはいえ、この手の問題に触れたての人には思考回路の打設が必要なのもまた事実だ。先日わけあって東大生5人にこのH29本試問1を解かせる場面があったのだが、みんな2時間もウンウン唸って結局自力でたどり着けた人はいなかった。一人は座標空間を定義してベクトルを取り始めたので慌てて止めた。どこのペーパーテストも、頭の良さというよりは経験値なのだ。受験生のみんなもとりあえず上で話した考え方のコツを掴んで演習を積み、早いところ影問題なんて作業だからつまらない、と宣言しよう。

 

(大西)