公開実技模試2019 第2回 総合表現
<概要>
東京藝術大学建築科の入試を想定したインターネット公開模試です。今年度合格したライターによる予測分析が反映された出題と、合格再現作品の分析に基づく本番に忠実な採点基準での講評が行われます。
<日時>
試験時間:11/21(木)~11/25(月)24:00のうち任意の7時間15分(目安)
提出期間:11/22(金)〜11/25(月)
講評期間:11/26(火)
注:試験期間を延長しています
試験時間:11/21(木)~12/1(日)24:00のうち任意の7時間15分(目安)
提出期間:11/22(金)〜12/1(日)
講評日:12/2(月)
<提出方法>
エスキース用紙・立体スタディ・解答用紙を撮影し、ハッシュタグ『#藝大建築模試』をつけて提出期間内にツイートしてください。
注:藝大入試論考建築科アカウントにてRTするので公開アカウントを用いてください。
<講評形式>
提出された全ての解答に対して引用RTにて講評を送ります。
評価はA,B+,B,Cの4段階です。
<持ち物>
解答用B3判TMK紙 1枚
解答用B2判白象紙 1枚
エスキース用A3版コピー用紙 3枚
鉛筆(描画用)
色鉛筆(描画用)
消しゴム
三角定規(30cm程度一組)
カッターナイフ
はさみ
スタディ用ケント紙 B3×3枚程
スティックのり
両面テープ(10mm幅)
カッティングマット(A2判)
スティール定規(30cm, 60cm)
紙粘土(スタディ用、400g程度)
注:今回の模試では受験生の負担を考慮し、必要な解像度を表現できる範囲で解答用紙の大きさを所定のものから縮小することも認めます。試験時間も各々の裁量で調整してください。
<試験問題>
第2回[総合表現]の模擬試験を開始します。試験時間は7時間15分です。
注:以下のリンクを押すと試験問題を表示します。準備を整えてから始めてください。
◇
試験期間は終了しました。
リアルタイム講評の様子↓
公開実技模試2019 第1回 空間構成
<概要>
東京藝術大学建築科の入試を想定したインターネット公開模試です。今年度合格したライターによる予測分析が反映された出題と、合格再現作品の分析に基づく本番に忠実な採点基準での講評が行われます。
<日時>
試験時間:
11/13 12:00~11/17 24:00 のうち任意の3時間
提出期間:11/13 15:00~11/17 24:00
講評期間:11/18
<提出方法>
エスキース用紙・解答用紙を撮影し、ハッシュタグ『#藝大建築模試』をつけて提出期間内にツイートしてください。
注:藝大入試論考建築科アカウントにてRTするので「公開アカウント」でツイートを投稿してください。
<講評形式>
提出された全ての解答に対して引用RTにて講評を送ります。
評価はA+,A,B+,B,Cの5段階です。
<持ち物>
- 解答用B3版TMK紙 1枚
- エスキース用A3版コピー用紙 3枚
- 鉛筆(描画用)
- 消しゴム
- 三角定規(30cm程度一組)
- カッターナイフ
- はさみ
<試験問題>
第1回 空間構成の模擬試験を開始します。試験時間は3時間です。
注:以下のリンクを押すと試験問題を表示します。準備を整えてから始めてください。
◇
試験期間は終了しました。
リアルタイム講評の様子↓
H31本試 合格作品集
さて、昨年に引き続き入試再現作品集を公開する。
自由度が増した平成31年度入試では、合格者の作品を見てもあまり参考になるとは思えないが、「最適解」は人の数だけあるということが伝われば十分。バラエティに富んだ作品群を見ていただきたい。
ひとりでも多くの藝大建築科の受験生に届きますように。
成績開示
空間構成:A/B/C (3段階)
総合表現:A/B⁺/B/C (4段階)
(随時更新予定。 - は不明・掲載不可または後日掲載)
________________________
センター:633/800(79.2%)
空間構成:A
総合表現:A
総合評価:A(合格)
________________________
センター:613/800(76.6%)
空間構成:A
総合表現:B⁺
総合評価:A(合格)
________________________
センター:407/800(50.8%)
空間構成:A
総合表現:A
総合評価:A(合格)
________________________
センター:608/800(76.0%)
空間構成:A
総合表現:B
総合評価:A(合格)
________________________
センター:-
空間構成:B
総合表現:A
総合評価:A(合格)
________________________
センター:658/800(82.3%)
空間構成:A
総合表現:B
総合評価:A(合格)
________________________
センター:552/800(69.0%)
空間構成:A
総合表現:A
総合評価:A(合格)
________________________
センター:-
空間構成:B
総合表現:A
総合評価:A(合格)
________________________
センター:-
空間構成:A
総合表現:A
総合評価:A(合格)
________________________
センター:-
空間構成:-
総合表現:-
総合評価:A(合格)
________________________
(随時更新予定。 - は不明・掲載不可または後日掲載)
《参考》
藝大建築科に行くには?【美術予備校の世界】
藝大建築科に入りたい!!よし美術予備校に行こう!!
・・・・・・え?それってどんなとこ?種類は?そもそもいかなきゃダメなの??
藝大受験の世界にようこそ!
あなたの知らない「美術予備校の世界」をご紹介します。
・・・・・・って、今年度の受験生向けには遅すぎるか!?いや、夏期講習前だからまだ役立つはず!と信じて。
(ピザ)
0.美術予備校とは何か?
東京藝術大学をはじめとする全国の美術系大学を志した者たちにむけて、この世界には美大受験対策に特化した「美術予備校」が存在している。(所謂絵画教室ではない)
絵画教室の目標が「絵がうまくなること」なら、美術予備校の目標は「藝大(美大)に合格すること」だ。
藝大、美大の実技入試には志望した大学・科によって様々な技術が求められるため、それを効率的に学ぶ場として、美大受験生の多くは美術予備校へと通うことが多い。
その中でもここ東京藝術大学 建築科が行う実技試験はやや特殊である。
「空間構成」と「総合表現」
これら二つの課題を攻略するには、ほかの科とは違う「建築的なアプローチ」を身につけなければならない。
その受験対策には「藝大」の「建築科」の試験を知り尽くした(?)人々、つまりは藝大建築科の合格者に教わるのが最短ルートである。
その、"教わる場所"(・・・・・・の一つにはこのサイトやTwitterがあるわけだが、)
としてあるのが「美術予備校」なのだ。
1.美術予備校の特色とは?
美術予備校の特徴はいくつかある。
まずは「講師」。
大抵は東京藝大建築科の合格者が務める。現在大学に在籍中の学生講師をはじめ、建築家としても働いているような卒業生のプロ講師などが教えている予備校もある。
建築についてはほぼまっさらな受験生にとって、有識者に自分の絵を見てもらいながら直接指導してもらえることこそ、美術予備校の一番の魅力だ。
講評時に彼らから投げかけられる言葉は、受験生たちの「受験に対する考え方」を徐々に形づくっていく。その予備校の特色は講師によって示されるといっても過言ではない。
そして「参考作品」。
美術予備校は各々大量のアーカイブを保管しており、そのラインナップは予備校ごとに異なる。
受験生たちはそれを参考にしつつ、同じ予備校の出身者たちが積み上げてきた知恵を徐々に身につけることで、個々の作品作りへと繋げていく。その結果、予備校によって「作風」のようなものも生まれている。*1
最後に何より「同年代の受験生」の存在。
美術予備校に行けば、同じ東京藝大建築科を志望するライバルに出会える。僕は講師よりも、むしろ同期や浪人生の先輩との会話の中で学んだことも多かったと感じている。周囲の人との競い合いで自分のレベルを確認したり、互いの作品に意見をぶつけ合ったりする、そんな「受験の空気感」を味わえるのも美術予備校ならではだ。
2.建築科ってどんな授業をうけるの?
美術予備校の最終目標は「藝大に受かること」だ。
多くの予備校のカリキュラムは基礎から応用、入試へ発展するように組まれている。
そしてすでにあなたが「藝大」の「建築科」に決めたのならば、その学習カリキュラムは入試に沿うため、おおまかに次のようなものへと絞られてくる。
最初はいわゆる静物デッサンなどの「基礎課題」。
絵画科やデザ科とは違い、単純な”絵のうまさ”だけでは決まらないのが建築科の試験だが、そうはいっても見る人に対し「空間」を伝えられなければいけないため、そのために必要となる程度の空間を描く技術(透視図法など)を学んでいく。
その後、立体構成や建築写生などの予備校独自の課題もはさみつつ、夏あたりからは入試課題の「空間構成」「総合表現」に特化した対策へと推移していく・・・
具体的な課題の内容や割合について各予備校ごとに細かな違いはあれど、課題の狙いに関しては大きな差はないだろう。↓
ある予備校の年間スケジュール
4月~6月 春季
課題:静物デッサン、建築写生
基礎力=デッサン力 である。
鉛筆の使い方から、パース、構図のとり方・・・云々
詳しくは↓
建築デッサン原論 カテゴリーの記事一覧 - 藝大入試論考 建築科
7月~8月 夏期講習期間
課題:構成デッサン(ムサビ系)、立体構成
夏後半からは→ 空間構成、総合表現
9月~11月
課題:空間構成、総合表現
一部予備校ではこの時期に公開模試が開催される。
(例年受験生の1/3ほどが参加し、その中で順位付けもされる。)
12月~1月 センター試験期間
冬期講習もあるが、大抵は学科対策。
1月後半~3月 直前講習
センター明けから入試前日まで、朝から晩まで実技漬けの日々。
3月6日、7日 建築学部入試本番
3.建築科の有名な美術予備校
まず、「藝大建築対策」を専門としたコースが設置されている美術予備校は、全国でも数限られており、なかでも例年合格者が在籍する大手美術予備校は、ほとんどが関東都市圏内に集中している。*2
以下、平成31年度の合格者15名がそれぞれ在籍していた予備校を、合格者数とともにリストアップする。
ここに紹介した予備校はどこもホームページからカリキュラムが閲覧できるし、パンフレットなどの資料も無料配布している。また、実際に授業を体験することもできるはずなので、気になった予備校には積極的に足を運んでみよう。
※表記上の補足
本記事では「直前講習のとき在籍していた人数」を合格者数として表記した。(各予備校が発表している「合格者数」は、講習生も含んでいる場合が多い。夏期講習等で予備校を渡り歩く受験生はダブってカウントされることもあり、結果全部足し合わせると18人になっていたりする。)
模試情報や予備校の雰囲気などは合格者たちの知りうる範囲で記述した。
(ただ、ぶっちゃけ雰囲気というのは生徒・講師の入れ替わりで常に変化していくものだし、自分に合っているかは結局のところ人それぞれなので気休めの参考程度に。 )
◆河合塾美術研究所
通称:河合
H31年度 2名 合格
新宿校と名古屋校があり「新宿河合」と「名古屋河合」と別予備校として扱われる場合も多い。
基礎課題ではデッサン重視。授業中は比較的静かな雰囲気。
公開実技模試を毎年10月中旬に実施し、例年、他予備校生も集まる一大イベントである。
新宿校
名古屋校
通称:シンビ
H31年度 2名 合格
色鉛筆での建写やオリジナルのプレゼンテーション課題等々、色々と個性的なカリキュラムを組んでいる模様。建築専攻は新宿校のみ。
シンビ建築科のホームページでは詳しいカリキュラムも紹介されているので必読。
◆湘南美術学院
通称:ショナビ
H31年度 7名 合格
とにかくゆるーい雰囲気が特色。基礎課題では「建築写生」と「立体構成」を重点的に行う。
神奈川県外からも多くの受験生を集めるマンモス校ゆえ、校内模試など年内数多くのイベントを実施。
◆ふなばし美術学院
通称:ふなび
H31年度 1名 合格
アットホームで少数精鋭。(雰囲気はショナビとも似てるらしい?)
例年は年に2回ショナビと合同でコンクールを開催している。千葉県船橋市。
通称:どばた
H31年度 1名 合格
エスキース中におしゃべりできたりするくらいのゆるい雰囲気。池袋。
毎年10月に公開模試「全国公開実技コンクール」を開催する。受験生向けの、どばた建築ホームページのQ&Aページも参考に。
◆代々木ゼミナール造形学校
通称:代ゼミ
H31年度 1名 合格
建築科の歴史は長く、総合表現以前は代ゼミ一強の時代だったと言われる。
模試等にはなかなか現れないガラパゴス予備校。原宿駅前。
通称:オチャビ
H31年度 1名 合格
提案重視型の「総合表現」に強く、ここの予備校出身者は個性派ぞろい。(らしい)
余談~美術予備校に通うべきか~
「確実に合格するためには美術予備校に通うべきか?」
今そう聞かれたら、「YES」と答えざるを得ない。
事実、予備校生と、予備校に通わない受験生の間には、受け取ることのできる情報量に圧倒的な差がある。参考作品、合格者の傾向等々、各予備校が積み上げてきたデータ量と、実際に同年代のライバルたちが切磋琢磨しあうなかでの経験値。それら全てを非予備校生が知ることは難しい。
この情報量の差を少しでも埋めるべく誕生したのがこの「藝大入試論考」なわけだが、予備校で得られる学びが大きいのは事実だ。
では「美術予備校に通えば合格するか?」と言うと話は別だ。
いま、藝大受験の世界において「美術予備校」が切っても切り離せない関係になっている。結果、それぞれの「予備校」では、各所で作る対策課題と積み重ねてきた参考作品に染められることで、図らずともそれぞれの場で伝統的な技法が生まれたり、定石的なアプローチができたりしている。
こうなったのはいたって自然なことであるが、、、はたしてそれは藝大が求めている受験の形なのだろうか。
いうなれば、本来「通わない」という選択肢もアリなのだということを忘れてはならないと思う。
もし「藝大受験するから予備校に行かなきゃ!」って思考になっているのであれば、落ち着いてその是非を一度考えてみてほしい。
もちろん、美術予備校に通うこと自体は否定しない。
筆者自身も美術予備校に通ってよかったと思っているし、結果合格もできてそのサポートをしていただいた講師には感謝しきれない。予備校でしか得られない経験もたくさんあったと思う。
ただ、我々が問題視しているのは「美術予備校に通うこと」ではなく「美術予備校に染まること」なのだ。有名美術予備校に入れば受かるわけではない。参考作品と同じ絵を描けば受かるわけではない。
入試論考としては、読者諸君には予備校が作り上げた作風という名の「形式」に安易に染まらない強さをもった受験生に育ってほしいとただ願うばかりである。
まとめ
「藝大受験を研究するにはまず美術予備校の研究から」
ということで美術予備校の情報各種をまとめてみた。
実際こんな数ページのネット記事に収まってしまうほどに、この藝大建築受験界隈は恐ろしく狭い。
その中でも、各予備校ごとにカリキュラムに色があり、少しずつ作風も違う。百聞は一見に如かず。まずは実際に足を運び「藝大受験」という世界の空気を体感しよう。
そして、今はまだ予備校に通っていない受験生も、もう通い始めている受験生も、自分にとって最適な学びの場所を見出してほしい。
建築デッサン原論②塗り
いやー。間空きすぎた。もはや来年向けの初級者講座第二回。
〈建築デッサン原論〉
①パース
②塗り
③光の反射・屈折
第一回のパースでだいたいの形は取れた。さすれば線で囲まれたそれぞれの面に塗りを乗せることが、デッサンの次の段階である*。
鉛筆の芯を紙に擦り付け、無限に往復する──簡単だ。ある領域を「塗る」という技術は、誰もが習得している。しかしここがデッサン(素描)の現場となれば、大切なことは「実際の空間にある立体」を塗っているという意識である。すなわち色々な「塗り方」の幅をもって、その立体のリアルな見え方を表現する、ここに基本的な描画理論が求められる。
※石膏デッサンなど有機的なモチーフを描く場合は、線で形をとらずに初めから塗りで捉えていったりするが、形が幾何的に絞られている建築科ではこの進め方は一般的ではない。
0. 塗りの3要素
まず塗りを動作として分析すると、ここに大きく3つのパラメータがある。1つは筆圧。筆先にどれくらいの圧力をかけるか。もう1つはタッチ。これには筆触;鉛筆をどれくらい尖らせて・どれくらい寝かせて紙に当てるか、ないし筆跡;どんな方向・密度の線の集合で面を描くか、を含むことにする。くわえて一般に馴染みが薄いのが、鉛筆の硬度、すなわちどの硬さの鉛筆で描くかということである。これについては少し解説。
コラム:鉛筆の硬度
一口に鉛筆といっても、画材屋に行くと豊富な芯の硬さ(黒さではない)がラインナップされている。固体なのにかたいもやわらかいも無えだろと言いたいかもしれないが、硬さというのはモース硬度の話で、要はやわらかいほど粒子の結合が崩れ(て紙に付着し)やすいということ。表記は全社共通で、硬い方から
… 3H, 2H, H, F, HB, B, 2B, 3B, …
とされているが、統一の基準があるわけではなくて、例えば同じ硬度でもステッドラー(ルモグラフ)はハイユニより1,2段硬いなどと言われている。ちなみにHはHard(硬い)、BはBlack(なるほどH系になると黒さの限界が落ちてくる)の頭文字である。FはFirm(しっかりした)…は?何だお前。
で、これが筆圧またタッチにどう絡んでくるかは、実際描き比べてみれば直ちにわかることである。敢えて言語化を徹底すれば、B系⇒やわらかい⇒粒子が紙に付きやすい…ほうが、まず同じ黒さを出すために要する筆圧が下がるため、紙の目(表面の凹凸)が潰れずに残る。加えてすぐ芯先が丸まって太くなるので、寝かせて丁寧に塗れば線の筆跡を埋没させることができる。反対にH系なら、強い筆圧で紙の目を潰し、代わりにシャープな線の筆跡を立てることができる。
美大受験生はハイユニかルモグラフの2H〜6Bあたりを数本ずつ揃えているのが一般的だが、あまりそれには囚われず「自分の」使いやすい鉛筆セットの個別最適化を考え続けるべし。詳しくは以下も参照のこと。
筆圧、タッチ、鉛筆の硬度。これらのパラメータを操作することで作り出される面の表情には、また大きく3つの要素があるだろう。すなわち、筆圧(と硬度)で導かれるトーン(面の階調;固有色+明暗)、タッチ(と硬度)で導かれるテクスチャ(面の質感)、加えてそれらのエッジ(面どうしの際、境界)の強さである。
一応言っとくけど、これ暗記とかするもんじゃないよ。これまで塗りを直感と慣れによってしか解釈してこなかったような、であるがために思考のカオスに嵌っているような人のために、理論的な分解・整理の一路を示しているだけで。
コラム:テクスチャの美学
塗りの3要素のうちトーンとエッジはある程度普遍的なものだが、テクスチャに関してはその限りではない。B系で紙の目を浮かすもの、擦って徹底的に潰すもの、H系で線を立てるにしても、ランダムに手首に任せるもの、徹底的に統制を執るもの…予備校や個人によって主義主張はあれ、これが正解、最適解ですというものは無い。自然に見えれば、それ以上は好みの問題である。
ただし、中級者はときどきこの「自然に見える」を置き去りにする。現実世界におけるデカい面の見え方というのは“一様なトーン+一様で僅かなテクスチャ”なわけで、面が不自然に見えるときはテクスチャを“立たせる”ことより“均す”ことを意識した方が良い。無闇に擦らず、寝かせて同じ筆圧・同じ方向でひたすら密に線を重ねる、シンプルだけどそれだけで十分なのだ。いずれにせよ、テクスチャは小手先の技巧においてではなく、あくまで引きで見たときのリアリティにおいて議論されるべきものである。
ではここからは、塗りの3要素が絵画空間における効果とどのように対応していくかを見ていこう。
1. 陰
「陰影」の二字はどちらも「かげ」と読むが、一般に陰は遮光体の面上で光の当たっていない暗い領域、影は遮光体から離れた床や他の面に投“影”される暗い領域を指す。
まず陰の話。これは自明にトーンと連関する。光が当たっていれば明るく、当たっていなければ暗い。ただし、これは上の図のようにゼロイチの話ではない。明部のなかでも、面の角度が平行光線に対面して垂直に近くなるほど(単位面積あたりに受ける光束の量が多いので)明るくなるし、陰であっても多少光の回り込み(回折)があるので暗い中にもグラデーションが生じる。
「光に対して30°の面は60°の面の2倍黒い」というような単純な比例ではない(し、そこまで厳密に捉える意味もない)のだが、とにかく重要なのは「光に対面しているほど明るい」という相関を守ることである。光に対する角度が同じ(平行な)面は同じ明るさで描き、それらの序列に矛盾の無いようにすること。
画面上での最終的な面のトーンは、明るさの度合いに加え、
- 空気遠近法(本稿3で解説)
- 素材の固有色(本稿おまけで解説)
- 床や他面からの反射光(次回解説)
などが乗って決定する。
2. 影
今度は影…床や他面に落ちる方の「かげ」の話。まず影がどういう現象か確認しておくと、光源と面の間に物体があるとき、それに遮られた部分に光が当たらなくて暗くなる。
暗くなるのだからトーンの話であるのは当然として、ここではもうひとつエッジの話をしておきたい。
遮蔽物に切り取られてから地面に落ちるまでの空気中で、光はわずかに分散する(あるいは遮蔽物の際で回折する)。これにより、影のエッジは遮光体から離れるほどぼやけるのである。晴れた日の電柱なんかの影を観察してみればよくわかる。このエッジのぼやけこそが影の影らしさ、面そのものとの違いだと個人的には思う。
初心者(僕の話だが)はしばしば、床に別の黒い面が敷いてあるような、いわゆる「海苔」を描いてしまう。これの最も重大な原因はやはりエッジのぼかし不足だろう。応急処置として擦るだけでもだいぶマシになる。ほかにも、光が当たっていないからと言ってドス黒く塗ってしまう(影のトーンも周囲とのコントラストの中で浮かないように調整すべき)、黒いからと言って影だけ違う硬度、タッチで塗ってしまう(影は面の一部分に純粋なトーンが乗っているだけなので、テクスチャは明るい部分と同じに見えなくてはいけない)なども「海苔」の原因となる。
ところで、光の分散(回折)をもっと信頼すれば、もはや影の中心部までもが遮光体から離れるほど薄くなっていくだろう。そこで、上の立体の薄い影と下の立体の濃い影の重なりを描き分ける、なんて人もいる(おまけの中央作品も参照)。
うまくやらないと海苔(別の面)っぽさの一助となってしまうし、好みの分かれる表現だ。
関連:影の形の求め方
www.gdpass-k.site
3. 奥行き
ここまで、光に対するかげによって「実際の空間にある立体」を浮かび上がらせてきた。しかしまだ何か足りない。シメは奥行きである。
早い話が、面が視点から遠く離れるほどトーンは薄まり、テクスチャやエッジはぼやけていく。これがモナリザから代々伝わる空気遠近法──線の遠近法(パース)に対して、大気中のちりによる光の僅かな分散が生み出す塗りの遠近法である。
それが最も象徴的なのは空間構成の床(地面)だろう。上は床の例としては不適だが、数多の参考作品に明らかなように…建築科では通例、床はしっかりとトーンを乗せて描かれる。それはアイライン付近にかけて霞んでいく空気遠近法を見せるためだったり、影や映り込み(次回解説)といった重大な空間説明を自然にするためだったりするが、とにかく面積あたりで立体と同じくらいの手間がかけられるほど、床は大切なモチーフのひとつだ。まったくこんなことをする科は建築くらいのものだが、扱うスケールを思えば頷ける。ファイン系の科で言われる「絵画空間」なんて所詮卓上のごっこ遊びだが、建築科は違うのだ。地平線が見える。
ちなみに、空気遠近法は色相にもかかる。光の波長による屈折率の違いで、遠景は白むだけではなく少し青みがかる。これは色を使う総合表現や建築写生で活かせるだろう。…ところで空が青いのは同じ理由なわけだが、空というのはほかでもない無限遠であって、これが青くないときは注意が必要である。すなわち、奥闇なら奥に行くほど黒くなるし、空も夕焼けなら遠景は赤くなるだろう。青みがかるというよりは「無限遠の色に溶けていく」と覚えておいた方が差し支えないかもしれない。
コラム:影と奥行きのジレンマ
影は遮光体から離れるほどトーンは薄くエッジはぼやけ、また面も奥に行くほどトーンは薄くエッジはぼやけると説いた。さてここで、奥に足をつけて手前に伸びる影を描いてみましょう。押さえるべき2つの効果はみごとに相殺して、近くも遠くも、足元も高みもない一様な影が爆誕する。終わった。
手前に突き出すキャンチ(片持ち)構成は迫力があって大好物なのだが、この影のジレンマは欠陥。結局僕は、トーンにおいては奥行き、エッジにおいては遮光距離による効果を勝たせて役割分担をさせることにした。遠景でもエッジは大して ぼやけないし、遮光体が高くてもトーンは言うほど 落ちない。そうだろ?そうだよな?そうなんだよ。
まとめ
- 塗りでは筆圧/タッチ/硬度を操作して、トーン/テクスチャ/エッジを作り出す
- 面は光に対面しているほど明るい
- 影は遮光体から離れるほどエッジがぼやけ、トーンもやや薄まる
- 面は遠くに行くほど無限遠のトーンに溶けていき、テクスチャやエッジもややぼやける
全部わかった気がしたら、さぁ実際に描いてみよう。描いててわからなくなってきたら、またいつでも帰ってきてね。
実際の作業を観たい人は動画もどうぞ▼
◇
おまけ. 素材
いやぁ、あの…ひとつ、そもそもいい?トーンとかテクスチャとか言ってっけどそもそも、その、それは何なの?それはその、何の トーンなの?何の テクスチャなの?つまりその、素材だよ。
僕が初めて予備校で入試課題を目の当たりにしたとき、ふとそんなことを思った。みんなが描いているその灰色の物質は石膏なのかコンクリートなのか何なのか。謎であった。そしてその謎は解かれぬまま、僕は合格してしまった。たったひとつの非常に素直な問いを憚り、忘却し、いつしか自ずから謎のマテリアルを描き始めたとき、人間は高等教育の奴隷になる。
控えめに言って、素材を想定しない素描など虚構である。実際、公式の評価項目にも
③ 素材及び立体が創り出す空間の描写力
とある。立体の形態が同じでも素材の質感が変われば空間性が激変するというのは建築では常識的な話で、藝大入試でも──空間構成においても総合表現においても、そこの自由意志は保証されてきた。H30空間構成で散見される別種立体の色分け(素材固有トーンの付与)はもちろん、不透明指定の無かった年は立体の一部透明化までもが工夫として認められた。しかしテクスチャとなると、素材の意図は集団的にスルーされ、紙のテクスチャないし鉛筆の筆跡でしかないのが現況である。
多摩美なんかでは建築系でも素材が与えられる(左)。僕も一時期空間構成を木材でやろうとしていた(中央)。樹種レベルで描き分けられるようになって、エスキースに“これはセンノキ、これはウォルナット”とか示せたら鬼カッコよかろうと思っていたが、「木目との比率でスケールが小さく限定されてしまうおそれがある」という(フルーツ)の指摘によりあえなく断念した。その(フルーツ)は一方で反射のある金属を描いたりしていた(右)。それから二人とも透明素材の屈折を研究していたように思う。反射と屈折については次回詳述する。
いずれにせよ、「素材自由」というのは必ずしも「考えなくていい」ということではない。多くの予備校で組まれている静物デッサンも素材テクスチャの練習くらいにしかならないのだから、何かしら研究してみると面白い。分野の発展というのは、案外こういうラディカルなところにあるのだと思う。
(大西)
公開実技模試 第4回 総合表現
<概要>
東京藝術大学建築科の入試を想定したインターネット公開模試です。今年度合格したライターによる予測分析が反映された出題と、合格再現作品の分析に基づく本番に忠実な採点基準での講評が行われます。
<日時>
試験時間:11/28(水)~12/3(月)のうち任意の7時間15分(目安)
提出期間:11/28(水)〜12/3(月)
講評期間:12/3(月)
<提出方法>
エスキース用紙・立体スタディ・解答用紙を撮影し、ハッシュタグ『#藝大建築模試』をつけて提出期間内にツイートしてください。
注:藝大入試論考建築科アカウントにてRTするので公開アカウントを用いてください。
<講評形式>
提出された全ての解答に対して引用RTにて講評を送ります。
評価はA,B+,B,Cの4段階です。
<持ち物>
解答用B3判TMK紙 1枚
解答用B2判白象紙(水張り)1枚
エスキース用A3版コピー用紙 3枚
鉛筆(描画用)
色鉛筆(描画用)
消しゴム
三角定規(30cm程度一組)
カッターナイフ
はさみ
スタディ用ケント紙 B3×3枚程
スティックのり
両面テープ(10mm幅)
カッティングマット(A2判)
スティール定規(30cm, 60cm)
注:今回の模試では受験生の負担を考慮し、必要な解像度を表現できる範囲で解答用紙の大きさを所定のものから縮小することも認めます。試験時間も各々の裁量で調整してください。
<試験問題>
第4回[総合表現]の模擬試験を開始します。試験時間は7時間15分です。
注:以下のリンクを押すと試験問題を表示します。準備を整えてから始めてください。
◇
12/3追記:提出者不足につき、講評をセンター試験後まで延期しています。
公開実技模試 第3回 空間構成
<概要>
東京藝術大学建築科の入試を想定したインターネット公開模試です。今年度合格したライターによる予測分析が反映された出題と、合格再現作品の分析に基づく本番に忠実な採点基準での講評が行われます。
<日時>
試験時間:11/21 19:00~11/26 16:00のうち任意の3時間
提出期間:11/21 22:00~11/26 16:00
講評期間:11/26
<提出方法>
エスキース用紙・解答用紙を撮影し、ハッシュタグ『#藝大建築模試』をつけて提出期間内にツイートしてください。
注:藝大入試論考建築科アカウントにてRTするので公開アカウントを用いてください。
<講評形式>
提出された全ての解答に対して引用RTにて講評を送ります。
評価はA+,A,B+,B,Cの5段階です。
<持ち物>
- 解答用B3版TMK紙 1枚
- エスキース用A3版コピー用紙 3枚
- 鉛筆(描画用)
- 消しゴム
- 三角定規(30cm程度一組)
- カッターナイフ
- はさみ
<試験問題>
第3回 空間構成の模擬試験を開始します。試験時間は3時間です。
注:以下のリンクを押すと試験問題を表示します。準備を整えてから始めてください。
◇
試験期間は終了しました。
リアルタイム講評の様子↓